Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
六
てくれ云々とあり、春隆も母親の手紙を黙殺することは出来なかった。といって、京都には未練があった。
陽子を誘惑し損ったまま東京へ帰るのは、何としても後味が悪い。どうせ東京へ帰らねばならぬとすれば、貴子から誘われたのはもっけの道連れだと、切符を手配する手間のはぶけるその汽車に乗って、
「途中熱海で降りるとしても、宿賃は向う持ちだ」
と、存外俗っぽい、しかし、それが持ちまえのチャッカリしたやに下り方をしていたとはいうものの、さすがに、
「あっちが駄目になったから、こっちを……」
という、陽子から貴子に乗りかえる現金さには、軽い悔恨があった。
しかし、またそれだけに、くしゃみよりも簡単に手が握れる。いきなり膝の上の手を握ると、貴子は表情も変えずに握りかえした。
それを、四つの眼が見ていた。
六
貴子の女友達の露子と章三の二人が、それを見ていたのだ。
「ははアん。やってるな」
露子は斜向いの座席から、握り合わされた貴子と春隆の手を、安物の彫刻を見るように、眺めていた。
血が通っていないようだった。恋人同士はこんな風には握り合わない。こんな風に何の感激も何の感慨もない握り方はしない。