Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
辟易したような顔をしながら、春隆は時計を見ている間、じっと貴子のむっちりした腕を握っていることを、さすがに忘れなかったのだ。
そして、貴子の胸の動悸を冷静に聴いていた――のだから、「見にくい時計ですね」という言葉に「醜い」という意味を含ませたのは、春隆にわずかに残っていた自嘲の精神だろう。
含ませるといえば、貴子の体を胸にもたせかけるまでにはしなかったが、含みはもたせたわけだ。
将棋でいえば、王手はせぬが、攻め味は残して置くという手! 王手を掛ける相手はやがて来るだろう。
陽子だ。
陽子と貴子の魅力の違いを計りながら、
「いい時計ですね」
春隆はわざとソワソワしたように、身を引いた。貴子は何の表情もない顔をしていた。燃えるような視線が、急にケロリと冷めていた。
「この女はおれに来ている」
という春隆のうぬぼれを、ふと錯覚にさせてしまうくらい、冷やかであった。
いわば双方とも申し分のない態度だった。陽子を待っている春隆にとっても、階下にパトロンが待っている貴子にとっても……。
「では、ごゆっくり……」
と、やがて貴子は出て行った。が、何思ったか急にまた引き返して来た。