Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Leggi 三国志(一) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 309.839 caratteri · 622 schermate
――するとそれまで、老いの手が痺れるほど子を打っていた母の手は、やにわに阿備のからだをひしと抱きしめて、
「おお! 阿備や! ……ではお前にも、一生土民で朽ち果てまいと思う気持はおありかえ。まだ忘れないで、わたしの言葉を、魂のなかにお持ちかえ」
「なんで忘れましょう。わたくしが忘れても景帝の玄孫であるこの血液が忘れるわけはありません」
「よう云いなすった。……阿備よ。それを聞いて母は安心しました。ゆるしておくれ、……ゆるしておくれよ」
「何をなさるんです。わが子へ手をついたりして、もったいない」
「いいえ。心まで落ちぶれ果てたかと、悲しみと怒りの余り、お前を打擲したりして」
「ご恩です。大愛です。今のご打擲は、わたくしにとって、真の勇気をふるいたたせる神軍の鼓でございました。仏陀の杖でございました。――もしきょうのお怒りを見せて下さらなければ、玄徳は何を胸に考えていても、おっ母さんが世にあるうちはと、卑怯な土民をよそおっていたかも知れません。いいえそのうちについ年月を過して、ほんとの土民になって朽ちてしまったかもしれません」
「――ではお前は、何を思っても、この母が心配するのを怖れて、母が生きているうちはただ無事に暮していることばかり願っていたのだね。