Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
おシンのゲタゲタした笑い声を背中にきいて、清閑荘を出て行った。
チマ子のことは少しは気になっていたが、しかし、もう一度坂野の部屋へ戻って、木崎から事情をきこうという気になれなかったのは、
「おれの知ったこったねえや。どうだっていいや」
という気まぐれな無関心であった。こまかく神経が働きながら、京吉にはどこか粗雑な投げやりがつきまとっていた。
そのくせ、靴磨きの娘が、
「兄ちゃん、あたいもう兄ちゃんが出て来えへんと思って、心配してたンえ」
と言いながら、いそいそとぶら下って来た小さな手の触感には、敏感だった。
十二歳でありながら、京吉がこれまで触れて来たどの女の手よりも、ザラザラと荒れていたのだ。それがこの青年のわずかに残っている無垢な心を温めた。
「お前、東京生れだろう……?」
「うん。あたいコビキ町で生れたのよ。あたいのお家煙草屋。あたいの学校、六代目と同じよ。銀座へ歩いて行けたわ」
「田舎へ行くより、東京の方がいいだろう。やっぱし東京へ行こう」
「うん。こんな汚い恰好で銀座歩くのンいやだけど、兄ちゃんと一緒だったら、いいわ」
高台寺の道を抜けて、円山の音楽堂の横を交番の近くまで来た時、京吉は石段下の方から登って来た若い女の姿を見て、おやっと立ち停った。