Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
ああ、その汗……と、木崎は想い出した。背中のくぼみにタラタラと流れるその汗を、木崎は、女の生理のあわれな溜息のように見たのだった。
その同じ汗を、亡妻の八重子は死ぬ前の日に流していたのだ。
木崎は夏に八重子と結婚した。木崎の借りていたアパートの一部屋で過した初夜の蚊帳を、木崎は八重子と二人で吊った。暗くして、螢を蚊帳の中に飛ばした。螢のあえかな青い火は、汗かきの八重子のあらわな白い胸のふくらみの上に、すっと停って瞬いた。
しかし、胸を病んでからの八重子は、もうどんなに暑い夜でも、きちんと寝巻を着て、ひとり蚊帳の中に寝た。汗をかく力もないくらい、衰弱していたのだ。
そして、死ぬ前の晩、八重子はか細い声で木崎を蚊帳の中に呼び入れて、
「短い縁だったわね」
ポロリと涙を落して、木崎の頭髪を撫でていたが、急にはげしく燃えた。
「ばか、死ぬぞ!」
「死んでもいい! 死んでもいい!」
と、叫ぶ八重子の体は寝巻の上から触れても、火のように熱く、掌には汗がにじみ、八重子の最後のいのちを絞り出したような、哀しい触感だった。――木崎はこの時ほど、妻の中の女のあわれさを感じたことはなかったのだ。