Classici giapponesi con furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Leggi 土曜夫人 (どようふじん) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 106.903 caratteri · 213 schermate
「兄ちゃんからことづけは……」
「ないわよ」
と、店の女の子は、日曜の夜は北野で待ち合わす男がいるのに、マダムの夏子がいつまでたっても帰って来ないので、出掛けられず、いらいらしていたのか、真赤に塗った唇が冷淡だった。
すごすごとセントルイスを出ると、カラ子は無性に京吉に会いたくなった。
「兄ちゃん、かんにんえ」
スリを逃がしたの――と、一言顔を見てあやまれば、
「ばかッ!」
と、横面を殴られて、おめえなんかもう絶交だと、坂野の細君の芳子と一緒にさっさと行ってしまわれても、もう構わない。とにかく、会いたかった。
祇園荘というマージャン屋も探して行ってみた。が、いなかった。隅の卓子で、主人夫婦らしい二人が、マージャン屋もあっちこっち出来すぎて、共倒れになりはしないかという夜更けの顔を向け合って、新聞を読んでいるだけ、あとは客もいなかった。
雨の中を往ったり来たり、そのたびに一つずつ灯の消えて行く四条通りを河原町通りへ折れると、カラ子の足は自然セントルイスへ向いていた。
セントルイスの戸は閉り、中は暗かった。軒下にたたずんで、カラ子はそっとその戸をたたいた。