Classici giapponesi con furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Leggi 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 213.575 caratteri · 424 schermate
「もう、十一時ですがネ」と、Oさん、ワイシャツの手くびをめくって、こと重大そうに一同を見まわす。そろそろ午後のコースが心配だといったような眼ばたき。
さなきだに、おどろしき御山の冬。一同、すでに帰心の色あり。御陵の前を離れて、「下山下山――」とばかり石段を下りかける。すると、御陵管守が「白峯寺は、上の道ですが」と注意してくれる。御陵の横をまた少し這い登ってゆく。
冬陽もささない寂光の古刹。
弘仁期の開基と聞くからに、白緑の石苔の上や、あやうげな勅額門の下に佇む連れの者まで、何か、遠い世代の人影みたいに見えてくる。
崇徳院の丸木ノ御所の建物をここに移した廟がある。紫宸殿になぞらえて、左近の桜、右近の橘もあったと聞かされたが、眼に沁みたのは満目の落葉と、昼も解けないでいる御手洗の薄氷。
東の崖道を降りてゆく。宝物館。ここで松山村の村長、青年団の方たち、館長など、ぼくらを待っていてくださる。館内に入る。絵画古文書をくるめても、藤原はおろか、鎌倉期にさかのぼる物はほとんどない。かつては、ありもしたろうが、吉野朝、応仁前後、戦国時代などの、いにしえのアプレゲールたちが持ち出してしまったのかも知れない。