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にっき

日記

宮本 百合子

09 一九二三年(大正十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页

青空文庫

さわぎなので自分はどうせと、髪を洗い、珍らしい天気なので祖母上をつれて青山六丁目の活動へ震災情況の映画見物に行く。一杯の人であつさこの上もなく、自分は立って祖母に弁士となる。満足し、これを見た丈で出、通りをブラブラ買物し乍ら歩いてかえる。ひどく祖母上疲れたらしい。この時一寸新派映画を見たが、まるでなって居ず。(一)画面が明るくない。(日本の空気によるか)(二)筋ばかりたどりすぎ芸術的のゆるやかさ、美しき余裕小説で云えば本当の叙景叙情がない。(三)役者に性格が現れず、動作が小さすぎこせつき、まるでその味のないことお話しになったものに非ず。

ひどく暑し、まるでお話にならない。袷で汗だくだく。あまり晴て居るので髪を洗う。あとで国男さんにきいたら、春江ちゃんも、やはり髪洗いをした由。東京中で此日は幾千人女が髪を洗ったかと微笑まれた。

余りあついので、又地震にでもなるのではないかと活動写真館でひどく不安を感じ、非常口の場所を見た。万一のことがあったら祖母上をつれ出すに危険とまで思う。これ丈神経質になって居るのだ。

十月二十二日(月曜)晴

祖母上、さいを伴につれ、十時半すぎ倉知の自動車で林町に戻られる。