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にっき
日記
宮本 百合子
09 一九二三年(大正十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,193 字 · 131 页
五月十七日
それかと云って、Aに、奉仕し、彼だけの大きさ、深さで終る気は更にしない。育てるだけは育て、自分の独特さがあれば、充分それをのばしたい。心ゆくばかりに生きたいのだ。
――○――
自分が半端な弱さを持つ、又他に一つの例は、与えられたよいと思う境遇に、堂々と落付いて居られず、妙に気がねをして、自己にはよすぎる、可恐しい、と云う弱気を出すことだ。
思うままでありすぎると、境遇に恐れを覚える。
わるすぎると、自己の腐ることを恐れる。
どっち道、はたを見廻しすぎる。
自分の額に炬火を立て、その勢でひた押しに押せない弱さがある。
この弱さは、二流以下の自分の goodness から来るか、生活力の弱少さによるか。
五月十七日 小雨
暫く前、早稲田大学で、軍事研究会を作ってその発会式をあげたら、反対の学生が大挙し、それを滅茶滅茶に彌次り倒したと云う事があった。
それが動機となり、共産党員と目される学生学者すべて警視庁で拘引し調べることにしたと、今日の新聞にある。それを読み、心が或ショックを感じた。一種の恐怖だ。ロシア帝政時代の或時が又廻って日本に来たような暗い緊張。