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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
十一月十八日
という小説は、インフレーション時代のベルリンと日本の震災時分を背景として動揺する中層の精神を描いて印象深くありました。スタンダールは読む人の成長につれて読み返される価値があり、作家とすれば、そのことがすでに一つの大きい価値ですね、私も読み返したいと思います。古行李をいじっていたら、新しい健康だわしが出ましたから、あれを使って益※(二の字点、1-2-22)風邪を引くまいと思いますが、哀れなことには、うちのお風呂がこわれたのよ。そしてもう同じかまはないのよ。銅がないから。お寒くはないでしょうね。
十一月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 榎戸庄衛筆「秋果豊収」の絵はがき)〕
この絵は光線ばかりにとらわれている作品だそうです。ギタギタですって。こうやってみると人間の危っかしい描き方ばかりが眼について、女の人などひざを一寸押すと、それきりガクリとゆれそうね。本当の動きの為に全身の筋肉を緊張させて爪先だっている女の弓なりの体などは本当に美しいのに。こんなアトリエのうそでごまかして。ブリュウゲルの写真版のいいのがあってペンさんが貸してくれ、台紙に入れて今日出来上りました。