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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
九月二十五日
(一)と野間仁根筆「越後毛渡沢溪流」(二)の絵はがき)〕
(一)二十三日
この絵をみると悪く親父の今日の気取り方に似た息子という歯がゆい気が致しますね。以前何時か能楽趣味の女が野原に佇む絵を描いて以来、あったら才能がカンバスの上を無駄に流れています。紫の花も白い花もちっ共愛されていませんね。秋声の息子の一穂も親父程の骨組みと角とがなくて、もまれてふにゃふにゃになっているし、芸術家の二代目は恐ろしや、ね。
(二)二十三日
これはこの画家の傑作の一つでしょうね。細部は見えないけれど、何だか気に入って喜こんで眺めます。奥まで本気に描き込んでいて気持がいいこと。この頃これだけ根をつめた絵をみなかったものだから。私には手前の方の子供や花がよく見えないのよ。お金持の友達があって、私がこれだけ気に入っているのを明日あたりふっと買って、かけて眺めるように送ってくれたらさぞ嬉しいでしょうね。ディッケンズの小説は、このさぞいいでしょうというところから出発した空想ね。
九月二十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕
九月二十五日
タオル寝巻をやっと出来上らしてもらって、さあ、これで嬉しいと床の上へひろげてたたもうとしたらどうでしょう、私が折角下前へくるようにと思って切った筈のつぎ足しが上前へ出てしまっています