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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
八月三十日
一、御注文の本はどれも品切でこれからも心掛けておいて、手に入り次第お送りします。「結核」はお医者様が持って居られるかも知れませんから、お聞きしてみます。フランスのは『昔がたり』が一冊だけありました。先、英訳で読んだ本は十年前に売った本箱に入って居ました。サンドはあるだけお送りしました(六冊)本のないのには実に閉口です。冨山房文庫は殆んど廃刊同様の有様です。手紙は又別に。
(二)本の話の続き、今朝はこういう字を書く方のペンが可愛い花模様の着物で現われたので、早速電話もかけられましたが、どれもなかったのは残念。岩波文庫に新しくジャムの散文詩と、オースティンの『説きふせられて』スタンダールの『ヴァニナ・ヴァニニ』などが出ているようですから買っておきましょう。こちらでお先へ拝見してという風に行けば誠に好都合なのですが、私の目玉の代用品は今のところどちらもミュウズの申子だから、時々創作的情熱という病気にかかって代用品の方を廃業するので、これもやはり至って焦点がきまりません。多分先へお送りする様なことになるのでしょう。隆治さんへの本願います。
八月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕