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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

八月三十一日

もっともこの人の中流と云うのは、大伴家持がそうであったように国守程度を指しているらしいけれども。清少とこの人との面白さの対比は、つき進んで見てゆくと、これまで面白がられていた以上に面白いらしく考えられます。この時代のずっと末になると藤原氏の力も衰え、女流文学もしたがって衰えて、たまに書いている人は、作品も貧弱だし、書くと云うことに対しての意識が変に外見的なものになって気に食いません。それに就ては、またこの次。

ついこんなに長くなってしまって、私はもうヘトヘトです。これだけ書く間に、一くぎり言っては「ね」とつける、その「ね」の数は幾百ぞ、です。スエコも疲れてきて、頭が痒くなりました。ではこれで一息ね。さようなら。

「紙って書けないもんだな」とスエコも歎声を発しています。

八月三十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 吉田博筆「剣山」の絵はがき)〕

三十一日

本郷の方へ出掛ける人に頼んで思いがけず『結核』がみつけられました。早速お送りします。他にフランス『襯衣』同じく『遊歩場の楡樹』スタンダール『アンリ・ブリュラールの生涯』とを、みつかりましたからメリメの第二巻と一緒にお送りします。