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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

十月九日

今日は二階がきれいになって、大分気持が楽になりました。

十月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

十月九日

もう素足がつめたいので、びっくりしてそちらにあげる小掻巻の肩当をつけたり衿をかけたり。御存じの通りこの頃は元のようなビロードがなくなっていますから、顎にふっくりとあたる着心地の為にはやりくり算段例の如し。ペンさんが手伝ってくれていたので六日附のお手紙は七日についているけれども、定例で一日置きの今日来てくれるまで、私は目なし鳥でした。

ユガマンは三〇〇錠で十一円、当分切れることはなさそうです。一日何錠かは聞き忘れましたが、凡そ八錠位でしょうがちゃんと聞いてこの次お知らせ致しましょう。ADはそちらで買っていらっしゃるのでしょう?

タオル寝巻が別にもう一枚あったというのは安心の様ながっかりの様な工合です。何故なら、あれは天にも地にもかけがえなしと思って、私の蒲団の上に伸ばしたりちぢめたり、ミシンでガチャガチャ半日やったり、おまけに私が上前と下前を取り違えたり、苦心と滑稽の交ざった誠に暖い生き物なので、それが領置でほとぼりがさめるのかと思うとがっかりの次第ですが、世間並の女房の言い草を真似れば満足なのが別にあったのは結構でした、と言うところでしょう。