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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
八月十五日
メリメ全集送ります。出版年鑑は不許でしたが念のため、もう一度お送りしてみます。近いうちに寿江子さんが又お会いして細かい容態をお話します。今日はむし暑い日になりました。家の小さい連中と母さんは一時帰京して、又郡山に行きました。今度は今迄にないひどい事でしたが心臓と肝臓がやっともって命を拾いました。ゆっくり構えて芯から健康を取戻そうと思っています。皆がお医者と相談して寝椅子を考えて、それを造ってくれようとしていますが、この頃は何しろ蝶番がちゃんとしたのが無いので、ナカナカ造れません。今ねているのは下の座敷の、家中で一番涼しい処です、夜は雨戸を開けてねます。大変息が楽です、私に栄養のある物を食べさせてくれようとする苦心が一通りでないので大いに恐縮しています、スエ子さんが命の親の権利を充分に行使して頭が上がりません、盛んに一皮むける処で痒がっています。時々吹くこの風がそちらにも通っているのでしょうか、くれぐれお大切に。(二)
八月十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 川島理一郎筆「金剛山の秋」(一)、和田三造筆「阿里山の暮色」(二)、岡田三郎助筆「高森峠より見たる阿蘇山」