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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
十一月五日
富雄さんのところを光井へ聞いてやりましたが、そちらでこの次の手紙で教えて頂きたいと思います、古いのしかないから。
来年は島田のお母さんが六十一におなりでしょう? 私達にとっての六十一はそれとして祝う意味もないが、お母さんはやはり還暦ということをお考えでしょう。普通は赤い座蒲団などを送りますが、そんな形式的なことは元気なお母さんに失礼ですから、何とかやりくりしてお気に入りそうな着物を一揃え上げたいものですね。御賛成でしょう? 島田へ二三度行くところをやめれば何とかなるかも知れませんね。くわしいことはまた何れ。今日も秋日和です。
十一月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 セザンヌ筆「花」の絵はがき)〕
大変に色が悪くて説明書の効能が発揮されませんね。今日は割合のんきな日で満開の山茶花の花を、二階からながめたりします。咲枝さんは正に今にも、というところで、うち中待機の姿勢です。なかなかの緊張ぶりです。
お正月になったらと楽しみなことがあります。それはまた自分で手紙をかいてもいいという許しを自分に出そうと思って。今度はどんな字を書くでしょう。