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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

十一月二十五日

ユーゴーその他の作品はずっと昔に読んだけれど、今読めばまた今の判断があるでしょう。けれども、今の私は当分現代に近い小説をドシドシ読んでもらって、小説ひでりを医したいと思っています。あなたに興味はおありにならないかしら。

今年の冬は寒そうで、そのしのぎの仕度が大変です。しかし太郎は十二月の十日の誕生日に、スキーの道具を一揃いもらいます。そして一辷りやるでしょう。父さんはちぢこまってどてらを着ていても、息子は雪の中にころべまた起き上って辷れ、と願う心は自然な健全さを持っているものですね。私もこれには満足です。

十一月二十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

今日は久し振りで吉報をもたらします。昨日午後一時五十分男の子が生れ、九百五十匁でまことに見事な坊主だそうです。七時半頃起こされてみたら、もう洗面所で支度していて出たのが九時少し前、いいお天気だったし、時刻も程々でおまけにお医者にほめられるような子供を持ったから一同大満足です。特に父親は今度初めて全過程を一緒にいてやって、大変深い感銘を受けたらしくて、赤ん坊と母親への可愛ゆさと健げさで心を動かされたと言っています。