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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

九月二十三日

だんだん高い薬しかなくなって閉口ね。昨日今日は大変よく眠って、恢復の感じが少しずつわかってきたようです。

今日は変にむすから風邪をお引きにならないように。

(二)前の葉書を書いて暫くしたら注射の為に水上先生が見えて、薬のことを御相談しましたら、強力メタボリンの錠剤と日本橋の日本ロッシュ会社発売のレドクソン(C)とを併用すれば一番よかろうとのことでした。オリザビトンなどは、このレドクソンを買って、それから又錠剤に作ったものだそうです。大変小ビンしかない様ですが、明日調べてみましょう。結局この二つを併用するのがよさそうですね。今日は薬屋がどこも休みだそうですから。いい代りが見付かって若しこのレドクソンがやたらに高くなければ実に好都合ですね。私の注射しているCはこのレドクソンだそうです。二十日。

九月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

二十三日。

二十一日附のお手紙、二十二日頂きました。一枚の葉書が一週間もあったまっていたとは、少々けた外れのことで閉口しました。皆さんがあっため好きなのではなくて、一人の御婦人があっため好きなので、然もその人が私の目の代用でしたから、そんなことも起ったわけでした。