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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
八月十三日
隆治さんが丈夫になったのは嬉しゅうございます。あちら土産のタオルというのはこれから恩恵にあずかります。輝ちゃんに押して歩く玩具を送ってあげたら、丁度その頃から歩くようになったそうで、その写真というのはぜひぜひ拝見致します。冨美ちゃんのお腹ペコは他人事ならず同情します。世界中の寄宿舎でお腹の空かないというところはないようです。
この半月程の間は、寿江子も色々の思いをして役に立ってくれて、大変恩にきせられそうです。太郎が少年ぽくなって、色々と病人をいたわるという事がわかって面白うございます。
[自注1](第一信)――前年十二月九日検挙された百合子は、はっきりした理由を示さず、翌四二年三月検事拘留で巣鴨拘置所へ送られた。七月まで調べがないまますぎた。女区は全く通風のない建てかたで猛暑の夏であったため、百合子は体じゅうアセモにつつまれて、二十八日ごろ熱射病となり人事不省に陥った。予後悪し、ということで自宅へ帰された。帰宅後二日ほどして意識が恢復した。眼の水晶体がふくれて、以来完全に視力を恢復していない。
八月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 小杉放庵筆「金剛山萬瀑洞」