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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
オリザビトンは今後は発売されないということは、もう前便でおわかりになったでしょうか。代りの薬として、ユガマンと言っていたのはどうも聞きまちがえらしくて、二三日中にペンさんが近藤へ自分で行ってはっきり調べてきてくれます。三〇〇錠で十一円だと定価まで言ったのに、今度は人が行って一日の分量を聞いたらば、誰一人その薬を知らず、本までみてないというのは実に奇妙です。電話ではユガマンと聞えるし、こちらでそういうと向うにも正しい名の発音として聞えるのでしょうが、妙ねえ。自分で用事がたせないと狐につままれたようなことがあります。電話は何故だか苦しくてかけられません。
足袋カバーは修繕出来次第送ります。ジャケツは今年はごましお色のですが、灰色のは私の防空着に拝借致します。毛布のことは私としては泣きの涙よ。六月に寿江子に度々手紙でそちらの毛布を洗濯しないでよいかどうか念を押したのに、いいとおっしゃったということでした。今は世の中にシャボンが消えて、御用聞きがない時代だのに洗濯屋だけは争って二軒も三軒も入ってきて、持って行ったものは一ヵ月もかかって出来上る有様です。