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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
09 一九四二年(昭和十七年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页
私は二三日来、注射をやめて飲み薬だけになりましたが、心のどかで好調です。何しろ静脈注射ですから気がはるのよ、痛い時はひどいから。
知らなかったけれどB・Cの外に砒素の薬が入っていたらしくて、それは心臓の為や体の再建の為に役立ったのでしょうが、あれの特徴で興奮性だからそういう刺激があって、レロレロのくせに働きすぎるというような傾きがありましたが、うちでの通称「ウワバミ」(ウワバニン)が切れたら、たががゆるんでお目出たくなって夜は早く眠がるし、少し動くとくたびれるし、気はのんびりしたし、つまり実力に戻って、うち中気嫌がよくなりました。今になって白状に及んだところをみると、みんな相当私のウワバミ元気にはヘコたれていたらしいのです。更に滑稽なことは咲枝さんも心臓の為にそれを注射されていて、ウワバミ元気にあてられる度も一入であったのでしょうが、しかしこの人の方は腰の痛いのがましだという結果に現われて、私のように悲しき女人足にはならなくてすんだのです。
こういう薬のこともなかなかむずかしいものですね。個人個人によって、受け方が大変違う、一つの体への+と-の関係が本人にもよくわからなくて。