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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
それが、今朝がた、お開きになってな、今、別れの昼御飯を食べておいでになる。博多、別府方面の親分衆は、二時の汽車で、門司からお帰りになる」
「それで、わたしに用事というのは?」
「吉田磯吉親分がな――この組に、玉井金五郎、森新之助、ちゅう二人の若い衆が居るそうなが、逢いたい、といいなさるんじゃ」
「なんで、また?……」
「光栄に思え」
「どうして、玉井とわたしの名を、特に、吉田さんが……?」
吉田磯吉のつれて来た女を、露探などといったばかりなので、新之助は気味が悪かった。
助役は、そんなことは知る由もないので、
「あれよ、ほら、こないだうちからの上海コレラ騒ぎ、あん時に、お前たち二人が、新聞に出たろうが。コレラの黴菌の海の中で、素裸でおって、コレラにかからんじゃった――そのことを、吉田親分が、知っていなさってな、逢うてみたいといわれる」
「ふウン、そんなことか。吉田親分も物好きじゃのう」
「おい」助役は、新之助の肩を、指でぽんとつついて、卑屈そうな笑みを浮かべ、「羨しいぞ。お前たちの運がひらけて来たんじゃ。吉田さんは、新聞を読んでから、大層、興味を感じられた様子でな、門司の浜尾組に聞きあわせなすったらしい。