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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
あとがき
この小説は私の両親の伝である。玉井金五郎が父、マンが母、そして勝則が私である。庶民としての父の一生を書きたいことは、長い間の私の念願であった。今ようやくそれを果し得たのであるが、そのときはもう父はこの世にいない。昭和二十五年九月九日、脳溢血でたおれて、鬼籍に入ってしまった。享年七十二歳であった。『花と龍』は父の在世中書きたかったのであるが、そして、親不孝ばかりして来た私のせめてもの罪滅ぼしにしたかったのであるが、いってもかえらぬことになってしまった。もっとも父が生きていたら、この小説をよろこんでくれたかどうかはわからない。
母マンが健在で、もう七十になる。若いころ鍛えて来た身体なので、どうかすると私たちより元気だが、この『花と龍』をどんな気持で読んでいたことであろうか。好きなキザミ煙草をくゆらしながら、女房の良子に、「勝則が、なんもかんも、尾鰭をつけて書いてしもうて」と、苦笑しながら述懐していたということである。それでも、他人には「勝則が、玉井組が無うなって、お父さんも死んでしもうでから、日本中に宣伝しよる」などと語ってうれしそうにしていたということである。