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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

親と子

金五郎、マン、勝則の三人は、前夜の遭難を、絶対に、他人に口外しないことを申しあわせていた。内輪の者にも話さない方がよい。もし子分連中にでも知れたら、どんな復讐行為に出ないともかぎらない。歯を食いしばって、小さな闘争を避け、もっと大切な戦いに、全力をあげなければ、と、親子の気持が一致していた。

親と子

静かな夜の空気をふるわせて、安養寺の鐘が鳴っている。九時らしい。よく晴れわたった星空に、天の川がとびぬけて明かるく、きらめく帯になって、頭上に横たわっている。

浜ノ町から、郵便局の横を通って、金五郎と、君香とが、肩をならべて話しながら街の方へ行く。日若座の火災事件について、原田雲井のところに、法律上の相談に行った帰りだった。

金五郎は「夕立」の踊りの話をして、

「ほんとに、びっくりしたよ。お京は、まるで、忍術使いじゃ」

と、いった。

「ほんまに」と、君香も、ためいきをつくようなうなずきかたをして、「あても、お京はんの突飛なのには、あきれたわ。温習会の前の日に、ひょっくり訪ねて来やはって、……そうやなあ、もう、あれから二十五年にもなるのと違いまッか。……どないも、こないもない――一生の願いやさかい、「夕立」