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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

それを、こっちから、先を越して、鼻を明かしてやれ、というわけで、ここに居る、友田喜造やら、大谷剛一、市川弥兵衛、松部五八郎、などの暴れん坊が、八人ほどで、夜討ちをかけたんじゃ。向こうは、不意を食ろうて、あわてたらしいが、喧嘩の準備は、ちゃんと、出来ちょる。竹槍、日本刀、猟銃、ピストル、熊手、出刃、鎌――ようも揃えたもんじゃ。約束の刻限が丑満じゃったもんで、まだ、人数は半分くらいしか集まっとらん。吹き降りの大嵐の中を、こっちの同勢が、近づいて行くと、ポオン、ポオン、音がする。もう射って来たかと思うたら、四斗樽の鏡を抜きよったんじゃ。江崎満吉というのは、派手な奴でなあ、自分も大酒飲みじゃが、喧嘩の首途にゃ、どんな小人数のときでも、新しい四斗樽を買いこんで、景気をつけよった」

「その酒代は、払うたことがないそうですよ」

友田喜造が、横から、いった。

色のどす黒い、細い眼の奥が、鳶のように、底光りしている、中肉中背の男である。女のような声を出す。まくりあげた袖の下や、はだけた胸から、全身に彫青をしているのがわかる。顔に、数ヶ所の傷痕がある。吉田磯吉の一の子分らしい。