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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
と、話をつづけた。
吉田磯吉の一の子分、友田喜造の刀が、鋸の歯のようになったところまで来たとき、足音がして、五六人の見なれぬ遊び人があらわれた。背はひくいが、眼の鋭い一人が、
「おい、おしゃべりしとる、そこの兄ちゃん、ちょっと、向こうまで、顔を貸してくれんか?」
そして、ひょろ長い、跛の一人が、新之助の腕をつかんだ。
新之助は、道具倉庫の裏に、つれて行かれた。
竹籠、スコップ、雁爪などが積みあげられ、赤錆になった錨が一本、足を切られた蛸のように、投げだされてある。その上にとまっていた一羽の雀が、どやどやと、やって来た人間の群におどろいて、海の方へ、飛び去った。
立ちどまると、新之助は、
「わたしに、なんぞ、用ですか?」
と、きいた。
新之助は、年よりはすこし老けて見える。身体つきは頑丈だが、面長の色白で、整った顔立ちをして居り、癇癪持ちで、利かぬ気の半面、どこかに気の柔いところがあって、争いごとは好きではなかった。だから、遊び人たちに拉して来られると、はじめから、日ごろの敏捷さにものをいわせて、隙をうかがって、逃げだすつもりにしていた。
「おう、用がないのに、誰が呼ぶか」