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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そういう人たちが、折尾で停車した列車に、どやどやと、乗りこんで来た。
その新しい乗車客たちを眺めていた金五郎は、あっけに取られた顔になり、眼をぱちくりさせた。
「やあ、大庭の大将」
「これは、皆さん、お揃いで……」
聯合組の親分連中は、大庭春吉と、口々に、そういう挨拶を、とりかわした。
「杢次どんは、相かわらず、もう、グデ助じゃのう」
とか、金五郎を見つけて、
「永田の大黒ボーシンも来ちょるな。いっぺん、君とゆっくりやりたいと、思うちょった」
などと、いう者があった。
金五郎も、それぞれ、適当に挨拶をしたが、今度の遠足のつれの、派手で、賑やかで、闊達で、色っぽくて、だらしのないことに、一驚せざるを得なかった。
列車は、折尾駅を出発し、なお降りしきる雨の中を走る。沿線は一面に緑の畳をしきのべた稲田である。案山子のおどけた顔が、いくつも、窓外を後方へ飛ぶ。
眼をさました永田杢次は、ゆらゆらと立ちあがった。サクにつき添われ、
「よう、お歴々」
と、呂律のまわらぬ舌で叫んで、新しい道づれの中に割りこんで行った。
そこでは、もはや、酒盛である。阿鼻叫喚の巷といってよい。