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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
で、お目にかかりましたが……」
「ああ、あのときの……」
女も、やっと気づいたらしく、あらためて、眼に力をこめて、金五郎を見なおした。
金五郎は、耳まで赤くなるほど、顔が火照ってはいたが、いくらか、気分は落ちついていた。
「あれから、もう、三年ほどになります」
「忘れてはいませんわ。……そうですか。立派におなりになって……」
それは、お世辞かも知れなかったけれども、たしかに、あのときは、四国の土百姓で、見るからに田舎者然としていた金五郎は、この三年ほどの間に、どこかに、泥と垢との抜けたところが出来ていた。眼の光も、ちがっている。
そういえば、女の方も変っている。あのときの若さと堅さとにくらべて、妖しいばかり、爛熟したものを感じさせる。堅肥りしていて、やや受け口の厚ぼったい唇にも、青んだ細い眼にも、二重にくくれたふくよかな顎にも、胸をどきつかせるような色気が、みなぎっていた。元禄模様の単衣を、キリッと締めあげた博多帯が、全身にあふれている妖気に似たものを、発散させる噴霧器の役をしている。赤い緒の草履を、無造作につっかけた、指のしなった素足が美しい。
女は、急に、いきいきと、切れ長の眼をかがやかして、金五郎に近づき、