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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

そのうえ、当日の、三番浮標を中心とする舞台装置、大道具、小道具の仕掛けが、派手すぎた。

どちらも、あかあかと、提灯をともしているので、金五郎と、角助とか、談判をしている最中に、すでに、水上警察署のランチが、ブイのところへ来ていた。ランチには、帽子の顎紐をかけた警官が、鈴なりに、満載されている。

また、石炭の荷主である麻生のボートも、到着していて、会社の本船係や、現場監督が、この場のなりゆきを注視していた。

角助の号令で、友田方が動きはじめると同時に、警察のランチから、大勢の巡査が、伝馬船に飛び移って、二組の間に、垣を作った。

「邪魔すんな、退け、退け」

逆上した角助は、もう、相手の見さかいがない。狂気のように、喚く。

しかし、そのときは、友田方は、警官たちに遮られて、行動の自由をうしなっていた。

結局、友田方が引きあげることになり、二隻の伝馬船は、水上のランチに曳航されて、若松側へ帰って行った。

失意と、憤怒とで言葉をうしなった角助は、ただ囈言のように、

「憶えちょれ。……今に、見ちょれ」

と、それを、くりかえしているばかりだった。

「すぐに、荷役をはじめてくれたまえ」