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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

おれの肌を見て、どうしても彫りたいという。こっちも彫って貰いたいと思うて、いっしょに、博多に行ったんじゃ。これだけに、一週間かかったよ」

金五郎は、お京との秘密を、マンに知られることを恐れた。胸の奥底が、疼く。

憑かれたような、夢幻のような、一週間であった。金五郎はマンへ秘密を持ちたくはなかったけれども、それは、強力無双な運命の軛のように、いったん捕えた金五郎を、離そうとはしなかったのである。

あの夜、泥酔した果、お京から、両腕に、龍の絵を描かれて、おどろいた。牡丹と蝶のお京の右腕と、昇り龍の自分の左腕とをくっつけて、鏡の中に映したとき、金五郎は催眠術をかけられたように、妖艶なお京の毒気にあてられていた。

「ねぇ、金五郎さん、きれいでしょう?」

お京は、男の腕をさすり、甘たるい声で、ささやいた。

「うん、きれいじゃなあ」

金五郎も、そう、思った。

「どう? 絵ではなくて、ほんとうに、彫ったら?」

「そうじゃなあ……」

「あなたのような身体は、彫青を入れるために、あるようなものよ。あたし、これまで、随分、いろんな人の身体彫ったけど、金五郎さんのような美しい肌、見たことないわ。