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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
、道具番の清七、新谷勝太郎、城三次、などの若い連中が「玉井組」の半纏姿で、血相変えてあらわれたので、暴漢たちは、たじたじとなった。急を聞いて、数名の巡査がやって来た。逃げ腰になっているところだったので、江崎の子分たちは、こそこそと、群衆をかきわけて、消えてしまった。
金五郎は、桜の木から、降りて来た。にこにこしている。
一幕終ったので、見物も散った。
「どうも、ありがとうございました。おかげで、助かりました」
金物商組合の幹部らしい中老人が、金五郎に、礼を述べた。
金五郎は、乱れた着物をつくろいながら、妙に、気恥かしげに、照れた様子で、
「なんの、かえって、御心配かけて、……もう大丈夫です。巡査さんが来ましたから。……失礼します」
子分たちをうながして、逃げるように、足早に、去って行った。
その後姿を、いつまでも、つぶらな眼を凝結させて、眺めている一人の青年があった。まだ二十歳を出ないらしい、少年といった方がよい、頬のふっくらとした若者である。火のような眸は、金五郎に釘づけにされ、なにか、心にうなずくように、しきりと、こっくりこっくりをしていた。
「安さん、なにぼんやりしとるとかい? 花見のやりなおしじゃ。