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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
君香の手紙とばかり信じこんでいたものが染奴のからくりであったこともわかった。
「金さんのような人は珍しいわ。どんな男でも、お京はんみたよなええ女子からいい寄られて、肱鉄食わすことなんて、でけへん。それも、おマンさん、みんなあんたはんに操を立ててのことやで」
君香からそういわれても、後の祭、追っつくことではなかった。
しかし、マンは、金五郎の方も、自分を疑っていたと知って、身ぶるいのする思いがした。
兄の林助から、
「オヤジは、お前と時やんとが、田舎で、都合ようやっとるように考えとったらしいぞ。時やんはお前を迎えに行くというて、広島に帰ったとに、お前が手紙の中に、時やんは居らん、なんて、書いて来るもんじゃけえ……」
そういわれて、びっくりした。
「でも、ほんとうに居らんのじゃもん」
「時やんが迎えに行っても、二ヶ月も三ヶ月も帰らんのなら、おれが迎えに行かにゃ、オヤジにすまんと思うたんじゃ」
「おかしいわねえ。時やんはどうしたのか知らん?……あたしは、ずっと、峯から出たことなかったのに、時やんが帰ったなんて、誰からも聞いたことないわ」
「ふウン……? オヤジは、もうお前と時やんとがくっついて、それを隠しとるように……」