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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
だ」――それは、玉井一家の動かすべからざる確信であった。
扉が開いた。
「ドテラ婆」が、入って来た。てらてらと艶のある浅黒い顔全体に、妙におどおどした、ひどく当惑したいろが漂っている。相かわらずの大丸髷、夏でも脱いだことのない綿入れのチャンチャンコ。そして、女角力のような肥った身体を、すりよせるような、警戒心に溢れた歩みで、金五郎の枕元に運んだ。
その後から、ぞろぞろと、四五人の子分たちがつづいて入った。廊下にも、七八人、ひしめいている様子である。
こちらは、松本重雄、「ノロ甚」、「中学生」の俊次、それに、マンだけしかいなかった。
ギンは、マンを見ると、黄色い声でいった。
「あんたが、ごりょんさんな? 玉井さんが斬られたちなあ。気の毒なことが出来たもんじゃなあ」
マンは、そっと、ベッドの下に手をさしこんだ。柄を握りしめると、すらりと、刀を引き抜いた。
「ごりょんさん、あんた、ほんとに、心配じゃろ? あんたの気持、おれにはようわかるよ。おれの親父が、やっぱ、喧嘩で、こげな目に逢うたことがあるけん。……それで、どげな風な?」
容体を訊ねたのに、相手が答えようとしないので、ギンは、臆病そうな眼つきで、マンを見た。