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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そんな奇妙な自信も生まれていた。
十二月三日、寒風の中に霰がまじった。
未明、玉井組の連中は、新しい半纏姿で、新仲町の家に勢揃いした。ここでも、神酒をひっかけ、まだ暗いので、弓張提灯を持って、金五郎先登に、蛭子神社へ出かけた。
産婆に注意されて、マンは家に残った。
東の空が白み、「蛭子座」で、神主が祝詞を読みはじめたとき、あわただしく、女中のジュンが飛んで来た。
「オヤジさん、男の子が生まれましたよ」
「蛭子座」で、一騒動持ちあがるかと思われたが、それは噂だけで、なにごともなく終った。
マンの生んだ男の子に命名するために、金五郎は数日の楽しい苦吟をした。そのとき、文字を知らず、学問のない悲しさを味わった。それでも、人に頼む気にならず、漢和大字典だの、暦や、姓名学の本などと首引きをした。
それを見て、マンも笑いながら、
「どんな名をつけなさるの?」
「人に負けんような、ええ名をつけてやるんじゃ」
「そんなら、勝という字を入れたらええのに」
「そうじゃなあ……?」
「あなた」
「うん」
「あたし、今、気がついたけど、今年は丙午よ。女でのうてよかったわ。丙午の女ははげしすぎて、男を食う、男を殺す、なんて、昔からいうけん」