轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
金五郎から受けとった名刺と、財布の中の物とを、巡査はしきりに照らしあわせはじめた。
群衆は好奇心にあふれた眼で、この場のなりゆきを眺めていたが、もっとも、驚愕に近い眸で、射るように、金五郎を凝視していたのは老掏摸であった。
手錠をはずされ、くしゃくしゃになった着物を着たが、帯をしめ、草履をはく間中も、その視線は金五郎から離れなかった。般若の五郎は、方々にかすり傷をこしらえ、額には瘤、歯茎にはうっすらと血をにじませている。しかし、どんなに、不審そうに、洋服紳士を見つめても、彼には正体を知ることが出来ないようだった。不思議でたまらぬように、小首を傾ける。
(自分の財布を盗んだ泥棒の着物を、拾ってやる人間が、どこの世界にあるだろうか?)
老掏摸の表情は、あきらかに、そういっているように見えた。
巡査は点検を終ると、相違ないと思ったらしく、書類になにかを書きこんでから、財布を返してくれた。
「巡査さん、この人を、許してあげて下さいませんか。わたしが、身元引請人になりますが……」
「そういうわけには、いかんですよ。被害者はあなた一人じゃないし、取り調べをせにゃならんから、豚箱に入れます。