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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「はあ?」

「もう一つ、いうときたいが、君の息子の勝則君な、あれが、このごろ、光丸という芸者と仲ようしとるようにあるが、あれは止めさせてくれんか。あの女に触られちゃあ、困る」

金五郎は、びっくりした。

そのおどろく顔を、小気味よげに見た友田喜造は、

「ああ、長湯して、のぼせてしもうた」

そういうと、海嘯をまきおこして、湯槽から、飛び出た。あおりを食って、金五郎は、顔中、飛ばちりをかぶった。

友田は、タオルをしぼると、鏡の前に立ちはだかって、身体を拭いた。彫青の青黒い背中を見せたまま、

「玉井君、君は、「竹の家」の辻木惣八は、よう知っとるじゃろ? 君もなんぼか、浄瑠璃を語るし、義太夫をやる者で、辻木を知らん者はない。その辻木が、若松民政党の幹部であることも、君は知っとる筈じゃ」

「知っとります」

「光丸は、その辻木の養女なんじゃよ。ただの芸者じゃない。芸者なんてせんでもええんじゃが、娘が芸事が好きじゃし、退屈もしとるもんじゃけ、遊びのつもりで、お座敷に出しとるんじゃ。辻木には、大学に行っとる出来のええ一人息子があるが、ちゃんと、その嫁に定めてある。来春、学校を出たら、おれが仲介になって、式を挙げさせることも、話が出来ちょる。