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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

うす緑の傘のいろが、二人の顔を染め、相合傘の姿が美しい。

蛭子神社の方へ、歩いた。

「良ッちゃん、勝則さんのおっ母さんて、割と、やさしそうな人やないか」

「でも、……」

「男まさりのはげしい人というて、評判でしょ? どんな恐しい人かと思うたわ」

「時姉さん」

「うん?」

「「猫婆さん」が、話しはせんか知らん」

「あんたと、勝則さんとのことを?」

「ええ」

「あれで、なかなか、蓮根食いやけ、そんな野暮はせんやろ。話したってええやないか。どうせ、このままでは、すみはすまいもん」

妹芸者は、黙った。内気らしい顔に、深い憂いのいろがただよっている。

蛭子神社の角を曲った。年代を経た大榎の梢に、鳩の群が、雨に濡れながら、しきりと舞っている。

「良ッちゃん」

これまでにない、強い姉の語調が、耳をはじいた。

二人は血をわけた真実の姉妹である。光三、光丸、という芸名で、若松検番から出ているが、おたがいの間では、時子、良子、と、本名を呼びあった。光丸が養女になっている辻木惣八の「竹の家」に、光三も同居している。料亭「竹の家」は、置屋も兼ねていて、他に、四五人、抱え芸者がいた。

「なあに?」