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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「ええ、……ちょっと、……」

「話さっしゃい」

「すこし、折り入って、……」

「こみいったことな?」

「はあ」

「なんでも、聞かせなさい。あんたのことなら、どげんことでも、相談に乗ってあぐる。親父にも、お袋にも、話されんことでも、わしになら、話せる筈じゃ。わしはあんたの戸籍じゃけんな。遠慮は要らんばい」

「結婚問題なのですが……」

勝則は正坐して、両手を膝に乗せ、うつむいたまま、苦しげな声でいった。ふさふさした長髪が、顔の前にたれ下っている。

「結婚問題、なるほど。……それが?」

「困ったことが出来ました」

「はっきり、話さっしゃい」

「あなたは、このごろの、わたしの縁談について、なにか、お聞きではなかったでしょうか」

原田雲井は、ちょっと考えるようにしたが、

「ようは知らんばって、……八幡の藤本組との話じゃったかな?」

「そうです」

「それなら、前に、ちらっと、井上安五郎君から聞いたことがある。それが、どげんしたとな?」

「その縁談をあなたから、断わっていただきたいと思いまして……」

「破談にするとな?」

「はあ」

「どして?」

「それが、……」

勝則は、いよいよ、苦しげに、うなだれた。