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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
玉井組は、一号、二号、三号と分かれ、それぞれ、中山弥志馬、広瀬伝吉、大島宗太という助役がいた。東海鋼業の仕事は、渡部徳一、八幡製鉄所の屑鉄作業の責任者は、往年の「中学生」、谷俊次である。
松本家の隣りが、「ノロ甚」の営む豆腐屋。
二人が通りかかると、
「オヤジ、ちょっと……」
なにか、切迫した表情の甚七が、下駄をつっかけるのもまどろこしいあわてかたで、表に飛びだして来た。一枚の新聞を持っている。
「これに、変なことが出ちょるが、……」
受けとってみると、「若松民友新聞」である。民政党の機関紙、河上健一という記者がいて、自党の宣伝と、反対党の攻撃を、毎日やっていた。政友会の方には、「九州民報」があり、高野貞三記者が、連日、論陣を張っている。
「ノロ甚」の指さすところに、
――痴漢、詐欺漢、非人道のボス、玉井金五郎を葬れ。
という大きな見出しがあった。
一面トップ記事だ。どうして調べたか、四国の郷里で、黒石家の養子に行った前後のことが、誇張し、歪曲された筆で書かれ、最大級の言葉を使って、悪しざまに罵倒してある。ヤスを凌辱したことになっている。
金五郎は、苦笑した。