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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「ゴロゴロを落せ――の作戦が、いよいよ、始まりましたね」

と、勝則も、笑った。

「やあ、お早ようさん、お揃いで出勤ですか」

ふりかえると、谷口政吉だった。馬車を引いている。彼もこれから仕事に出かけるところであろう。

マンの兄林助は六年ほど前に死んだ。長男の政吉は馬車曳きになった。父に似て、体力は頑健そのものだが、お人よしで、仕事の方も人並がやっとである。それでも、馬車曳きになると、乗馬にでもなるようなよい馬を手に入れて、ひとかどにやっていた。

よくマンに、

「叔母さん、叔母さんは、馬乗りが上手ちゅうて、よう親父が話しよったが、乗んなさらんですか。ええ馬ですばい」

などと、いったりしていた。

ガラガラと空馬車をひいて、行ってしまった。

聯合事務所に、一度、顔を出し、勝則は、小伝馬船に乗って、荷役をしている玄海丸の現場に出かけて行った。

夕刻、「丸金」の大広間で、三菱の招待宴が張られた。「丸金」は、「緑屋」から二町ほど離れたところにある。金五郎は、玉井組のマークが丸の中に金なので、ひどくこの料亭が気に入って、ひいきにしていた。

客は、支店長はじめ、十人ばかり。