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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
勝則と光丸とは、曲り角などに来ると、ときどき、立ちどまった。どちらに行こうか、これから、どうしようか、と思案している様子である。そういうとき、霧の中をすかすようにして、コヨのいる方角を見た。コヨは見つけられなかったと思っていたが、二人の方では気づいていたらしい。霧の中に、ぼうと霞んでいる電燈が、夜光虫のようである。赤い電燈などは、普段よりずっと真紅のいろを濃くにじみ出させていた。二人が、浜ノ町を抜け、暗い海の方へ行くので、コヨは心配になった。しかし、波の音が聞えはじめるところから、二人は引きかえした。また、街の方へ入った。三内町の角で立ちどまった。向かいあった。
それまで、まったく、口を利かなかった勝則が、ぽつんと、いった。
「ここで、別れよう」
「帰んなさるの?」
と、光丸がさびしげな声で訊いた。
「うん、……さようなら」
勝則は右手をさしだした。なにかの思いをこめた力の入れかたで、光丸の手を握った。離すと、くるりと回転し、霧の中に去って行った。
呆然とした様子で、光丸は、男の姿が霧に呑まれてしまうまで、見送っていた。
コヨは、その姿を盗み見ていて、「牡丹燈籠」