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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
のお露の亡霊を思いだした。ぞっとした。実際に、打ちしおれた光丸の姿は、そのまま、スウッと、霧の中に消えて行くのではないかと思われた。光丸は、うなだれて、力のない足どりで歩きだした。コヨの方へ近づいて来た。コヨは電柱に立てかけてある、大きな映画宣伝の立看板のかげに隠れた。小柄なコヨの身体はすっぽりと入る。看板には、国定忠治が、背に幼児を負い、御用提灯をひらめかす大勢の捕手役人を相手に、大刀をふるっている絵が、けばけばしい色彩で描かれてあった。
光丸は看板の前を通りすぎた。
そっと、コヨは顔を出して、その姿を見送った。
後姿が霧にうすめられかけたとき、光丸は、くるりと、ふりむいた。
びっくりした。あわてて、顔を引っこめた。
「おコヨ姐さんの馬鹿」
投げつけるような声がしたと思うと、にわかに、カラカラと、下駄の音が遠ざかって行った。
顔を出してみたときには、霧ばかりだった。……
「それから、ここへ帰って来たというんじゃね?」
金五郎が、訊く。
「いいえ、まだ、先がありますたい。一たん別れることは別れても、また、思いかえして、どこかで逢うということも、ないこっちゃない。