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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

というのが、まるで、押しやられたようにならんでいる。

原田雲井は、この花輪の前に立って、妙な顔をしていた。紋付羽織に、袴をはいている。

(光丸といえば、勝則君の話しとった女にちがいないが、その光丸に、どんなわけで、友田喜造が、こんな途方もない大きな花輪をやるのじゃろか?)

顎鬚をひねりながら、怪訝そうにしている原田の顔は、明らかに、そういっていた。わからない。

「原田さん」

と、呼びかけられた。

「こりゃあ、玉井のごりょん、御見物ですか」

「原田さんでも、こんな踊りを観に来なさるのね?」

「でも、は、ひどかですなあ。わたしはこれでなかなか粋人ですばい。昔は鶯鳴かせたこともありますたい」

マンは、ちらと、劇場前の花輪を見て、

「原田さん、あなた、この光丸という芸者さん、知っとんなさる?」

原田はどぎまぎして、眼を白黒させ、

「逢うたこた、ありまっせん。今日、よそながら、お顔ば拝見しようと思いましてなあ。……ばって、この花輪を見ると、友田喜造がやっちょるごたるけんど、友田がひいきにしとるとですかなあ?」

「この光丸さんには許婚があって、来春、その人と祝言するらしいです。