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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

それぞれ、自分の所属する団体に、或いは、個人的に、席を取っていた。

「エーイ、ラムネはよろし?」

ラムネを詰めた小箱をかついで、女の売り子が客をかきわけながらやって来た。

「ラムネを三十本ほどおくれ」

金五郎が声をかけた。今日は、聯合組も、家族づれが多かったので、そのために註文したのである。亭主連中は酒を飲んでいる。もう呂律の廻らぬ者もある。三十本はないというので、あるだけを買いしめ、金五郎は、女房子供連中に配ってから、「わたしはラムネが強いとばい」そういって、笑いながら、自分も飲んだ。「やあ、玉井さん、来とんなさるな?」

便所にでも行くのか、狭い通路を通りかかった、五十がらみの、半白の五分刈り頭の男が、上下に派手にならんだ金歯を光らせながら、声をかけた。連歌町遊廓で、一番大きな「いろは」という貸座敷を経営している矢崎新兵衛である。口の悪い原田雲井が、いつも、「民政党候補はガラクタばっかり、中でも、無学文盲の女郎屋の助平狒々」といっている男だ。

「こりゃあ、矢崎さん」と、金五郎は、愛想よくふりむいて、「いよいよ、選挙も近まりましたなあ」

「そうですたい。