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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「責任を取る?……」
「ええ、男らしゅう」
「子が子なら、親も親じゃ。ははあ、お前がそそのかして、させたとじゃな? そんなら、お前を許すことならん」
ずんぐりと肥えた、酒くさい息をはく大男が、マンの左肩をつかんだ。
「なにをするんです」
「知れたことよ。他人の大切な奥さんに傷をつけといて、ただですむと思うちょるか。これでも、食らえ」
右手で、マンの頬をはげしく打った。
それを合図に、外の二人も、マンに躍りかかって来た。
マンは、地面に蹴たおされた。それでも、絵本と果物とを入れた紙包みを落すまいとして、しっかりと、胸に押しつけた。そのため自由をうしなって、さらにさんざんに打擲された。
しかし、次の瞬間、三人の暴漢は、かき消すように、逃げ去っていた。遠くから、佩剣をがちゃつかせながら、やって来る巡査に気づいたらしい。逃げ足は早い。
マンは、歯を食いしばって、痛む身体を、無理に引き起した。着物の泥をはらい、身づくろいをした。飛んでいる下駄を拾って履いた。片方は鼻緒が切れている。口中が生ぐさいので、ハンカチで拭いてみると、歯茎から血が出ていた。
靴音が近づいて来た。