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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

どこもかも、違反ばっかり。こんなことで当選した人が、政治家になるなんて、あたしは、そんな政治、信用出来んわ」

しかし、夫にはそんな不服をいいながらも、集まって来る人たちには、愛想よく、笑顔をもって接した。渋滞なく、出入りする大勢の人たちの世話を焼いた。

正保寺町の自宅の表に、「厳正中立・玉井金五郎選挙事務所」という看板がかかげられた。字は子供たちの通った小学校の先生で、書家である河合正気という、長髯の老人に、揮毫して貰った。――河合先生が看板を書いた候補者は、かならず、当選する。……いつか、そんな妙な伝説が出来ていて、依頼者が多かったけれども、気骨のある老先生は、これと思う候補者以外は書かなかった。札束を積んで来ても断わった。原田雲井も書いて貰ったが、「今度は、絶対、当選、疑いなか」と、布袋腹をたたき、髯面をほころばせて、自信満々としていた。

原田は、一日に一度は、かならず、金五郎の選挙事務所に顔を出す。状勢を報告し、作戦の打ちあわせをする。

碁を打ちながら、

「五十八議会は、十三日で終ったばって、最後になって、また、泥試合をやっちょるなあ。大乱闘、肉弾戦、民政党総務の頼母木桂吉が、政友会の志賀和多利に殴られて、怪我しちょる。