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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
自分一人の胸におさめていた。そして、金五郎には、奇妙な微笑を浮かべて、
「お京さんが、今度、若松に来たら、ぜひ、逢うてあげてね」
と、いっていた。マンの小さな陰謀である。
金五郎は、まだ、お京とばかり、思いこんでいる。マンの言葉を聞いて、
「逢うても、逢わんでも、ええたい」
どぎまぎして、しどろもどろの返答をした。
よく晴れた日の早朝から、金五郎は、森新之助と、猟に行った。新之助の娘百合香がついて来た。
高塔山と谷ひとつ隔てた山に、高野山九州別院「東南院」がある。その周囲の鬱蒼たる森林に、このごろ、雉子が出没するという噂。猟の目あてはそれだった。
「お父さんの腕前は怪しいから、危いなあ。あたしを射っちゃいやよ」
百合香が、新之助をひやかす。
「このごろは、免許皆伝になっとるんじゃ。心配すんな。……なあ、金さん」
「うん、狙いの上手になったとは、感心しとる。じゃが、百合ちゃん、なんぼ下手ちゅうでも、雉子とあんたとを取り違えやせん。自分の狙うもんは知っちょるたい」
「でも、このごろ、お父さんは、頭がのぼっとるから……」
「馬鹿たれ。のぼっとるのは、お前じゃないか」