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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

十二区の山車といっても、実際は、玉井組の山笠といってもよかった。金五郎夫婦が世話好きのうえに、祭などの賑わいごとが好きなので、一所懸命である。町内から寄附金が集まるけれども、それでは足りない。不足分は、玉井家で負担した。山笠の飾り物も、商売人に頼まず、子分たちが総がかりでこしらえた。松本重雄の飯代部屋が、工場に変る。町内の、昔、人形師をしていたという、小間物屋の上林が指導に当り、暇を見て、金五郎が、直接、采配をふる。子供たちも、学校から帰ると、大勢で手伝う。

「花を握っとる龍というのは、面白いですなあ」

そういう上林は、金五郎の腕の彫青など、見たことはない。あることすら知らないかも知れない。

「昇り龍がええわ。景気なおしに」

町内の人たちが集まって、山笠の意匠を工夫していたとき、そういいだしたのは、マンであった。誰も異存はなかった。そして、マンは、人形作りの上林に、宝珠のかわりに、龍の肢に、菊の花をにぎらせることを依頼したのであった。すると、金五郎が、照れくさそうな顔で、片一方は、百合にしたがええ、といいだしたのである。

「色気のある龍で、なかなか、よかたい」