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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
山笠は、ときどき、ワッショ、ワッショ、と、喊声をあげて走りだす。山笠には、どれにも、十人ほどの大人がついている。
十二区の山笠の横には、金五郎の姿があった。おどけ好きの金五郎は、武蔵坊弁慶の恰好をつくり、大小刀を二本、薙刀、高い一本歯の足駄をはいている。その外は、子供も、大人も、白と黒、横縞の揃いの衣裳、白の鉢巻。山車のうえでは、打ち鳴らされる鉦太鼓につれて、金粉銀粉をやたらに振りかけられた巨大な龍が、菊と百合との花束を抱いて、進行につれて、生きてでもいるように、ゆらめき動く。
「オヤジ」
明治町を通過しているとき、ボーシンの中山弥志馬が、後から、声をかけた。仕事が休みなので、中山も祭衣裳で、山笠についていた。
「うん?」
「気をつけんと、七区の山笠が、うちの山笠に、喧嘩を吹っかけるという噂がありますばい」
「七区?……おかしいなあ。七区というのは、松ヶ枝町、明治町、三内町、……なにも、いざこざのあるわけはないが、……」
「わたしも、そう思いますけんど、みんながそういうちょります」
「友田は四区、栗田は十五区、……吉田親分のいる老松町もちがうし、……七区?……誰が居ったかなあ?」