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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「すみません。でも、もう、光丸は、わたしの子供を孕んで居りますし、……」
「それも、知っとる。仕方がない。子供はこっちで育てる。大体なら、貞操蹂躙で訴えるところじゃけんど、あれを芸者としてお座敷に出しといたのが、こっちの油断じゃ。あきらめる。年ごろの娘じゃけん、男の中に出しゃあ、あり勝ちのこと、わしはわかった話をしよるつもりじゃ。それに、あんたが光丸を強姦したのでもないらしいけん、あんたを咎めよるわけじゃない。出来たことは仕方がないけん、黙って、手を引いて貰いたいんじゃ」
「どうしても、駄目でしょうか」
かたわらから、夫人が身体を乗りだして来た。これも、長煙管を、火鉢の縁で、コンコン鳴らしながら、男のような嗄がれ声で、
「あなたも変な人ですなあ。たかが芸者風情を家に入れんでも、玉井組の御曹子といやあ、どんなええところからでも、三国一の花嫁御寮が来まッしょうに。八幡の藤本組と縁談がととのっとるということ、噂に聞いたように思うけんど、嘘でしたかな? こっちは、それこそ、ありッたけ、怨みつらみをいいたいところを、光丸が馬鹿じゃけ、堪忍しとるとですよ。要之助もおとなしい子で、涙をのんで、傷ものにされた女を、黙って嫁にしようといいよる。